今偽物の空に輝くのは、偽物の星だ。星ひとつひとつが契約者それぞれの生の印。契約者が死ねば、その星は流れる。しかし、ロックオンが生死不明となった時刻から今まで、流星は確認できなかったのだという。 それの、意味するところは。 「生き、てる…?」 ティエリアはすぐさま医務室へ舞い戻ると、刹那に星が流れていないことを伝えた。 「そうだ、彼は、死んでいない」 「ロック、オンが…生き、て…」 刹那は言葉を噛みしめるように、確かめるようにそう何度も繰り返した。驚愕と衝撃からか、目は緩く見開かれていた。その様子を傍らで見つめるティエリアは、口元に微かに笑みを浮かべた。これで、この子は壊れないで済むと。 「ロックオン…」 もう二度と届かないと思っていた名を呟けば、今度は刹那の心に歓喜が込み上げてくる。あぁ、もう一度呼べるのだ。いや、何度だって。その名を呼んで、答えを求めることができる。 いつの間にか、刹那の瞳には光が戻ってきていた。 ロックオンもまた、白の中にいた。様々な管を身体に通され、生かされていた。目が覚めたのは先ほどのことだ。彼を助けたのは、スメラギの旧友だという白衣の男だった。その辺りの深い事情は落ち着いたら話すということで、絶対安静を言い渡し、男は部屋から出て行った。 「………ッ…」 ひとりになった部屋の中で、起き上がれはしないかと身を捩ってみたが、鋭い痛みが駆け抜けただけだった。自分の思い通りに行かない体が腹立たしい。まとわりつく包帯が鬱陶しい。ロックオンは感情のままに舌打ちをしようとした。けれど、それすら今の彼には叶わなかった。怪我と、長い治療の結果、彼の身体は自分で思うよりもずっと疲労し、弱っていた。 ロックオンは眉間に深い皺を寄せ、目を伏せた。その瞼の裏に、一番最後の彼の姿が映る。泣きそうに顔を歪め、己を助けようと必死になってくれていた、あの最後の瞬間。ロックオンは、確かにそのとき、刹那を見捨てていた。ひとりで生きさせるつもりで突き放してしまった。いや、それよりももっと前、刹那に自分以外の誰かが存在することを知ったときから、死んでもいいと、思っていた。けれど、命は繋がれた。それならば、ロックオンの心の行き着く先は、ひとつ。 あぁ、刹那は。刹那は泣いていないだろうか。苦しんでしまっていないだろうか。心ばかりが焦って、落ち着かない。 早く、早く。おまえのところへ、帰りたい。 |