「珍しいもの食ってるなー、どうした?」 「…隣が、…」 ロックオンが久しぶりに刹那の利用しているマンションの一室を訪れると、目的の人物は普段なかなか口にしないイチゴのショートケーキを頬張っていた。聞けば、隣人が余ったから、とくれたらしい。 「おまえ、手ベタベタだぞ?」 “マイスターである刹那”にとっての必要最低限のものしかないこの部屋に、食器などあるはずがない。故に刹那は、ショートケーキを手づかみで食べていた。当然、てのひらは生クリームやスポンジのカスでベタベタである。 苦笑しながらロックオンが指摘すると、刹那は手を洗いに行こうとはせずに、それを舐めとろうとした。その様子を見て、ロックオンは小さな悪戯を思いつく。 「刹那、」 名を呼ばれ、瞬間、手を引かれる。何をするのかと刹那が考えを巡らせるまえに、ロックオンが動いた。 「―――――!?」 「甘…」 指を這う舌の感覚に、刹那はびくりと身体を震わせる。手を引こうとしても、強い力でつかまれていて、びくともしない。 「………っ」 こうなる原因になった生クリームはとっくに姿を消しているのに、いつまで経っても離してくれないロックオンを、刹那は少し潤んだ瞳でギッと睨みつける。 ロックオンはそれに笑みを返すと、小さな身体を腕の中に閉じ込めて、炎のような口づけを送った。 |