感じたことのないあたたかさに、刹那はふ、と目を覚ました。暗闇の中、床に雑に置かれた灯りが光っていた。それに照らされ、目に映るこの部屋は自分の部屋だ。けれど何か、違和感があった。 目の前に、壁のようなものがある。不思議に思って少し目線を上げれば、そこにはいるはずのないロックオンがいた。熱と、違和感の正体だ。 どうしてこんなことになっているのだろう。と、まだ少し霞む頭で考える。…そういえば、夕方頃彼がいきなりここまでやってきて、泊めてくれと言い出したのだった。ベッドがひとつしかないため、仕方なく二人並んで就寝した。が。 「………、」 だからと言って、抱き枕代わりになる約束はしていない。柔らかく、それでも逃げ出せないくらいの力で己の身体を拘束するロックオンの腕に、刹那は不機嫌そうに眉を顰めた。 けれど、何故だろう。妙な何かが身体の内を走り抜ける。 身体の自由が利かないのに、それすらしあわせで、それでいて心が締め付けられるようにきりりと痛んで、刹那はぎゅうと目を瞑った。 このまま腕の中にいては、いけないような気がした。自分の中の何かが、崩れ落ちてしまう気がした。 「………っ」 未知の領域に足を踏み入れる感覚に少し恐怖を覚えて、刹那はぐ、と腕を突っ張った。けれどロックオンの身体はびくともしない。それどころか。 「え、―――ひゃっ」 刹那の手に押されて、目を覚ましてしまったのか、ロックオンの腕がさらに強く絡まり、腕を突っ張ることすらできなくなった。それだけならまだよかったものの。 「…大人しくしてろ、…刹那…」 聞いたことのない声色で、少しだけ乱暴な言い方で、耳元に注がれた声に、刹那は目を見開いた。心臓が、その速度を増していく。身体が炎のように熱くなって、知らぬ間に瞳が潤んでいく。まるで、熱に浮かされたときのようだと思った。…そう、それはある種の病。 夜中の三時。少年は、誰にも知られずに恋に落ちた。 |